弁護士 秋山亘のコラム

2016.06.20更新

大家が確認すべき賃借人の信用情報

 

<質問>

 私は、ワンルームマンションを購入し、しばらくの間、賃貸に出そうと考えてます。

入居の際に確認しておくべき賃借人の信用情報を教えて下さい。

 

<回答>

1 将来、家賃の滞納があった場合、訴訟をすれば民事の勝訴判決は比較的容易に得られます。

しかし、判決を得ただけでは、なかなか回収に結びつかないことが多いのが滞納家賃等の事件の特徴です。

 というのも、民事の場合、判決を得て債務者の財産を差し押さえようと思っても、債務者に実際に財産がない場合、或いは、財産の所在が分からない場合には、財産の差し押さえが出来ないからです。民事の勝訴判決を得ても、債務者に強制労働をさせて債権を回収することや債務者の資産を裁判所が職権で調査して差し押さえてくれるというのではないのが、債権回収の難しいところです。

 中には、滞納家賃が回収出来ないだけならまだよいほうで、家賃を長期間にわたり不払にされたまま、契約を解除してもアパートに居座わられたために、裁判をして強制執行により立ち退かせたため、多額の強制執行費用(ワンルームマンションで40~50万円かかる場合もあります)がかかったという事例もしばしばあります。

そのため、大家としては、万一の家賃滞納に備えて、入居予定者やその連帯保証人の資産状況をしっかり把握しておくことが大切です。

2 入居者の資産情報として、とくに重要なのは、入居者本人と連帯保証人の勤務先の把握です。

勤務先がしっかりしていれば(とくに長年勤めている会社員などあれば)、勤務先の給与を差し押さえることにより、判決後の家賃回収はスムーズにいきます。

 逆に、勤務先がはっきりしない場合、勤務先と言っても転々としたアルバイト勤務である場合には、勤務先のしっかりした方の連帯保証人を立てることが大切です。

 また、勤務先が変更になった場合には、随時、変更後の勤務先を賃貸人に連絡することを賃貸借契約書で明記しておくことも重要です。

なお、勤務先と言っても「自営業」の場合には、給与の差し押さえのようにスムーズに家賃の回収出来ないことが多いため(会社の役員報酬を差し押さえても、滞納者が支配している自分の会社の場合には任意に支払って来ない可能性があります)、入居者本人と自営業が会社であればその会社の取引先金融機関の銀行名・支店名などを把握することによって、万一に備えることになります。

ただし、銀行口座の差し押さえの場合には、銀行名と支店名を特定すれば、口座番号まで分からなくても差し押さえが可能ですが、差押えをした時点において預金が残っていなければ回収できないため、差し押さえに際してはなかなか難しい問題が生じることもあります。

3 この他に把握しておいた方がよい信用情報としては、入居者の負債情報があります。これは本人の申告内容を信用するしかありませんが、負債が多いと、当然のことですが、将来的に家賃の支払いが遅れがちになったり、破産申立をされて回収不能になったりするリスクが高まりますので、当然のことながらチェックすべき項目になります。

4 また、入居者の構成などもチェックすべき項目となります。子供と一緒に家族で入居する場合には、単身で入居する人よりも、家賃を踏み倒して出ていく事例は、比較的少ないように思います。

逆に、広いマンションを単身で入居する方の場合には、実際には複数で入居している場合があり、その場合に入居者間同士で家賃負担をめぐりトラブルになるケースなどもあります。

また、外国人の場合には、しっかりとした在留資格があるか否かを確認することも大切です。

5 このようにして、入居者や連帯保証人の情報をしっかりと確認してから、賃貸借契約の締結の有無を決めることが将来的に滞納家賃や契約解除による建物明渡などの事件に巻き込まれないための対策になります。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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