弁護士 秋山亘のコラム

2016.09.20更新

素行不良な子に相続させない方法

 

(質問) 私は小さな洋品店を経営をしていますが、私の長男は高校を中退した後家業を継ぐことを拒み家出をし暴力団員となって10年余りになります。その間、長男は、ふらっと店に戻って来ては店のお金や商品を持ち逃げしたりするので、私がこれを諌めると私や妻に殴る蹴るの暴力をしたり、客や近所の人の前で私を罵ったりして侮辱をすることを繰り返してます。

 私には、長男の他に妻と次男の家族がいるのですが、私の唯一財産であるこのお店と土地は、現在店を手伝ってもらっている次男に相続させたいのです。暴力を繰り返してきた長男には、一銭たりとも相続をさせたくはありません、その余裕もあり線。何かよい方法はありますか。

(答え) 子に財産を相続させない方法としては、①遺言と②相続人廃除の申立てという方法が考えられます。

1 遺言の場合

 遺言による場合には「一切の相続財産を甲野次郎(次男)に相続させる」いう内容の遺言をすることによって、すべての相続財産は次男が引き継ぐことができます。

 しかし、このような遺言によっても、長男は遺留分減殺請求権を行使することができます。遺留分の制度とは、たとえ遺言で全ての遺産を特定の相続人に相続させたとしても、他の相続人は相続財産の一部について権利を主張することができるという制度です。各相続人は総遺産の1/2に各法定相続分を乗じた財産を遺留分として請求できます(なお、実際には店舗などの財産そのものを分配するのは困難ですから金銭での賠償になることが多いです)。

 本件では相続人が妻、長男、次男ですので、法定相続分は妻が相続財産の1/2、長男・次男がそれぞれ1/4となり、長男が遺留分減殺請求権を行使すれば、長男は遺産価格の1/8(=1/2×1/4)に相当する金銭の支払いを次男に請求できます。

 なお、遺留分の放棄という制度もあります。遺留分の放棄をするにはその本人が家庭裁判所に申し立てる必要があります。本件では長男がこの申立てをするとは思えません。

2 相続廃除の申立ての場合

 では、遺留分でさえ相続させたくない場合はどうすればよいのでしょうか。

 このような場合、相続人廃除の申立をすることが考えられます。

 これは、相続人が被相続人に対し虐待・侮辱を加えた場合やその他著しい非行があった場合に、家庭裁判所に申し立をし相続人廃除の調停又は審判を受けることによって、相続人の地位そのものを奪ってしまうという制度です(なお、廃除された相続人に子がいれば、その子に代襲相続させることはできます)。

 廃除を受けた相続人は相続人ではなくなるのですから、前記のような遺留分の権利もなく、全く相続を受けられなくなります。

 本件では繰り返し暴力を振るっていたり侮辱をしていたりしていますので、相続人の廃除は認められるでしょう。但し、相続人の地位を奪ってしまうものですから、申立人だけの一方的な申立だけで廃除が認められるわけではありません。裁判所は相手方を呼び出して相手方の意見もきちんと聞いた上で、公平な立場で判断します。

 なお、相続人廃除の申し出は遺言でもできますが、この場合には相続開始後、家庭裁判所に相続人廃除の申立をすることが必要です。そのために証拠になるような資料は残しておくべきでしょう。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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