定期借家制度をご存じですか?-立退料の請求を受けないために
(質問)
(1) 私は、都内にマンションを一室所有しているのですが、そのマンションを貸し出したいと考えています。しかし、建物を一旦貸すと借家人の権利が強くて、なかなか返してもらえないと聞いています。3年後には、息子も大学を卒業し、卒業後は独立してコンピューター関連の商売を始めたいと希望しておりますので、3年後にはこのマンションを息子の事務所として使わせようかと考えております。その為、貸し出して良いものか迷っています。何かよい方法はないでしょうか?
(2) 私は、定期借家契約で事業用店舗を借りる予定なのですが、注意するべき点は、何かありますか?
(回答)
1 (1)の回答
平成11年12月、借地借家法が一部改正され(平成12年3月1日施行)、新たに「定期借家権」という制度が創設されました。
従来は、建物を期限を定めて賃貸しても、家主は、借地借家法上の「正当事由」(建物の自己利用の必要性等)がないと更新拒絶ができないとされ、また、その「正当事由」も裁判上は簡単には認められず、仮に認められても多くのケースでは立退料の支払が必要であるなど、賃借人が使用継続を希望する場合に家主が建物の返還を求めるには、大変な苦労を要する場合が多くありました。
今回の改正法では、約定の期間の経過とともに、無条件で建物の返還を求めることができる「定期借家権」という制度が創設されました。本件でも、賃貸期間3年の定期借家契約によって、建物を賃貸すればよいでしょう。
但し、法は、借家人保護の為、家主に対し、下記の手続きをきちんと踏むことを要請しています(これを一部でも怠ると更新可能な通常の借家契約になりますので注意が必要です)。
<法定手続き>
書面によって契約をかわすこと。
この契約書には、「期間の満了とともに契約が終了し、更新をしないこと」を明記する必要があります。
②定期借家権の内容について書面を交付して説明すること
定期借家契約の終了時に通知をすること
貸主は、期間満了の6ヶ月前から1年前の間に、改めて「契約終了の通知」を借家人に対して出しておかなければなりません。万一、この通知を忘れた場合は、通知を出したときから6ヶ月経過後が契約終了時になります。
2 (2)の回答
借家人は、期間の経過によって、無条件で建物を出なればなりません。
この他に、定期借家契約では、途中解約権の制限にも注意しなければなりません。
すなわち、定期借家契約では、「家主からも」「借主からも」中途解約権を原則として認めていません。従って、中途解約ができない以上、残存期間の賃料については、建物を使用しても使用しなくても支払わなければなりません。
もっとも、法は借主保護の観点から、「床面積が200平方メートル未満の居住用建物の借家契約」において、「転勤・療養・親族の介護そのたやむを得ない理由があって、借主が生活の本拠として使用することが困難となった場合」には、借主からの中途解約権を認めています。
ただ、本件のような事業用の借家契約の場合にはこのような例外規定もありません。中途解約権を留保しておきたい場合には、契約書にその旨明記しておかなければなりません。