弁護士 秋山亘のコラム

2017.06.05更新

交通事故と慰謝料に関する法律相談

 

<質問>

 私は、ある追突事故にあい、鞭打ち症になりました。通院を6カ月続けた結果症状が治まり、治癒となりました。

 保険会社からは損害賠償金の案内が来ています。保険会社は、実通院日数の3倍を通院期間として慰謝料を算定しているようです。保険会社の算定した慰謝料は相当な金額なのでしょうか。なお、私は、一週間に1日の割合で通院しておりました。

 また、休業損害について、保険会社からは「会社を休んだことによる減給がなければ出ない」と言われています。私の場合、事故直後1週間は自宅で安静にしており会社を休んだのと通院のための何日か早退をしていますが、全て有給休暇を使っているため、給与額は以前と変わりません。このような場合には休業損害として認められないのでしょうか。

<回答>

1 通院慰謝料について

保険会社の申し出る慰謝料の基準とは、保険会社の自社基準に過ぎず、裁判所が裁判実務で用いる損害賠償基準とは異なります。

裁判所が裁判で用いる損害賠償基準は、「民事交通事故訴訟 損害賠償基準」(通称「赤い本」)に記載されており、通院何カ月で幾らというように通院期間を基準に慰謝料が算定されます。

 例えば、鞭打ちうち症のように他覚的症状がない(本人の主訴以外の客観的所見に乏しい)傷害の場合には、赤い本の「別表2」という基準が適用され、通院3カ月で53万円、通院6カ月で89万円の慰謝料が標準的な金額とされております。

 この基準においても「通院期間が長期にわたり、かつ、不規則な通院」である場合には、実治療日数の3.5倍の日数を通院期間とした上で慰謝料が算定されますので、実際の通院期間よりも短く評価されます。

しかし、実治療日数の3.5とされるのは、①通院期間が長期であること(受傷内容にもよりますが通院期間1年前後が目安になると思われます)、②不規則であることの双方の要件が満たされる場合ですので、いずれか一方しか該当しない場合には、上記基準は適用されず、実際の通院期間がそのまま適用されます。

 このように裁判所の基準と保険会社の自社基準は異なりますので、保険会社の自社基準で算定すると裁判所の基準で算定した慰謝料額の2分の1以下の金額になってしまうことはしばしばあります。

 そして、保険会社は、被害者本人が示談交渉をしても自社基準での慰謝料の算定しかしてくれず、弁護士を立てて示談交渉をしないと裁判所基準での慰謝料の算定に応じないことが多くあります。

2 有給休暇と休業損害について

 次に、有給休暇を使用した欠勤ないし早退についてですが、これも休業損害として請求すれば認められます。

有給休暇を使用した欠勤については通常の欠勤の場合と同様に計算して一日分の休業損害が、早退については仮に有給休暇を使用せず早退した場合の減給額について会社に算定してもらい、それをもとに休業損害を算定します。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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