借地・借家権譲渡の方法
(質問)①私は借地上に建物を建てて住んでいるのですが、このたび借地上の建物を処分したいと思うのですが、地主が承諾しそうにもありません。何とかなりませんか。
②建物を借りて飲食店を経営しているものですが、経営が思わしくないので、店舗を借家権付で売ろうと考えています。大家が承諾しそうにないとき、どうしたよいでしょう。
(答え)借地権を譲渡したり、転貸するには、事前に地主の承諾を得なければなりません。なぜなら、借地権を無断で譲渡・転貸することによって、地主との信頼関係を破壊したと判断された場合には、賃貸借契約を解除されてしまうからです。なお、借地上の建物を譲渡すると借地権も譲渡したものとみなされますので、この場合も地主の承諾が必要です。
このように、借地権の譲渡を考えている場合には事前に地主の承諾を得なくてはならないのですが、①借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合で、②第三者が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず地主が承諾しないときは、借地権者は裁判所に承諾に代わる許可の裁判を求めることができます(借地借家法19条)。
譲り受ける人が資力に問題があって地代を支払えない人や暴力団員などであれば、地主に不利となるおそれがある場合と言えるでしょうが、そのような事情のない場合、裁判所の借地非訟事件手続によって許可を得ることが可能です。借地非訟事件の手続は、借地の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所(合意のある場合)に書面をもって申し立てます。裁判所は、鑑定委員に鑑定意見を提出させるなどの審理をし、許可を与えるかどうかを判断します。その際、譲渡する借地人に財産上の給付(いわゆる名義書換料の支払)を命じることがあります。この名義書換料の相場ですが、借地権価格(場所により異なるが土地の時価の7割前後が目安)の10パーセント前後となっています。
この他に、地主から当該借地(これを「底地」と言います。)を買い取ってしまうという手段も考えられます(底地買取価格=土地時価-借地権価格)。これには、地主と土地の売買契約を結ばなければならないので、地主が合意しなければできません。しかし、前記の借地非訟手続きでは少なからず地主と対立してしまいますので、今後の地主との煩わしい関係(地代の値上げ問題や更新時の更新拒絶の問題)を清算したいと言う場合には、借地非訟手続きよりむしろこの手段がお勧めです。また、借地非訟手続きでは、地主から借地権及び建物を買い取ることを請求されるリスクがあります(買取価格=借地権価格+建物価格-前記名義書換料)。これは「介入権」といい、この介入権を行使されると、借地人はこれを拒むことができないのです。
以上が借地の場合ですが、借家の場合には、承諾に代わる許可の裁判という制度はありません。従って、飲食店店舗を居抜きして売ろうという場合は原則として貸主の承諾を得なければなりません。但し、借家権を無断で譲渡しても、貸主との信頼関係を破壊していないと判断される場合には貸主の契約解除は無効となります。しかし、借家の場合、建物の使い方が人によって異なるなど借主の個性が大切ですから、無断で譲渡した以上は信頼関係を破壊していると判断されてしまう恐れが高いでしょう。