裁判員制度とは?
-その1(裁判員の選任手続と辞退事由)
平成21年度4月から裁判員制度がスタートしました。裁判員制度は、衆議院選挙の有権者であれば、誰でも選ばれる可能性のある制度です。
そこで、今回と次回では、裁判員制度についてよくあるご質問の中からご回答したいと思います。
<質問>
1 裁判員にはどのような人が選ばれるのですか。
2 裁判員に選ばれた場合、辞退することは出来ないのですか。
<回答>
1 裁判員の選任手続
裁判員は、衆議院議員選挙の有権者の中から選ばれます。裁判員裁判の対象となる事件は、一定の重大な犯罪で、例えば、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪などの事件ですが、このような重大事件の裁判に備えて、あらかじめ向こう1年間の裁判員候補者を無作為に選び、「裁判員候補者名簿」を作成することになっております。そして、事件の審理が始まる前に、その名簿の中から、さらに無作為抽出により、その事件の裁判員候補者が選ばれます。
裁判員候補者は、裁判所から呼出状を受け取り、指定された日時に裁判所に出頭します。呼出状には、質問票が同封されています。裁判員候補者は、質問票に回答を記入し、事前に返送します。
選任手続においては、質問票への回答や、裁判所での質問への回答をもとに、裁判員になることのできない一定の事由(欠格事由・就職禁止事由・不適格事由)がないか、裁判官が判断します。裁判員の欠格事由とは、国家公務員になる資格のない人、義務教育を終了していない人、禁錮以上の刑に処せられた人、心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障のある人などです。就職禁止事由とは、国会議員、国務大臣、国の行政機関の幹部職員、司法関係者(裁判官、検察官、弁護士)、大学の法律学の教授、准教授、自衛官などです。不適格事由とは、当該事件の被告人の親族、被害者やその親族、当該事件の証人予定者などです。
また、後に詳しく述べますが、裁判員候補者も、一定の事由があれば裁判員の辞退を申し出ることができます。この場合には、その旨裁判官に申告し、裁判官が事情を聴いて、辞退を認めるかどうかを判断します。
また、検察官と被告人は、一定の人数の候補者について理由を示さずに選任しないよう請求することができます。
こうして、呼び出された裁判員候補者の中から、その事件を担当する裁判員が決定されます。裁判員に選任されると、そのまま午後から審理に立ち会うことになります。午前中に行われる裁判員選任手続で裁判員に選任されなかった裁判員候補者は、そのまま帰宅することになりますので、正午頃までには帰宅できます。
なお、裁判員候補者として、裁判所から呼び出しがあったにも関わらず、正当な理由もなく裁判所に来られない場合には、10万円以下の過料に処せられることがあります。
また、次回に詳しく説明しますが、裁判員や呼び出しを受けた裁判員候補者には、旅費や日当が支給されます。また、裁判員の仕事をするために休暇を取得したことなどを理由に、使用者が不利益な取扱をすることは禁止されています。
2 裁判員の辞退事由
裁判員を辞退することは原則として認められません。 しかし、裁判員法が定める事由に該当する方は、例外的に辞退を申し出ることができます。具体的には、年齢が70歳以上の方、会期中の地方公共団体議会の議員、学生、生徒などは、辞退を申し出ることができます。
同居している親族の介護や養護を行う必要があるために、裁判員の職務を行うことが困難な場合にも、辞退の申出が可能です。
また、仕事が忙しいというだけの理由では、辞退はできないことになっています。仕事を理由とする辞退が認められるかどうかは、具体的な事情を聞いた上で、事件を実際に担当する裁判所が判断することになりますが、次のような観点から、総合的に判断されることになっています。
(1) 裁判員として職務に従事する期間
(2) 事業所の規模
(3) 担当職務についての代替性
(4) 予定される仕事の日時を変更できる可能性
(5) 裁判員として参加することによる事業への影響
辞退が認められるか否かは、とくに、自分以外の人ではその仕事の遂行が出来ず(つまり、代替性がないこと)、また、それによる事業への支障が重大であるかどうかが重要なポイントになるでしょう。
なお、質問票に虚偽の記載をしたり、裁判員等選任手続における質問に対して嘘を言った場合には、30万円以下の過料(行政処分としての制裁)に処せられることがあります。また、質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出したり、質問に対して嘘を言った場合には、50万円以下の罰金(刑事罰)に処せられることもあります。