個人保証制度に関する民法改正について
(質問)
個人保証に関する民法改正が為されたと聞きましたが、どのような点が改正されたのですか。
(回答)
1 書面によらない保証契約の無効
これまでの民法では口頭による合意でも契約は成立するというのが大原則でした。
しかし、今回の改正では、保証契約に限り、書面によらない保証契約は当然に無効とされることになりました。なお、この点に関する改正法は、個人保証だけでなく、法人の保証契約など全ての保証契約に適用があります。
2 個人貸金等根保証契約の改正
銀行取引約定書等では「X会社が現在及び将来負担す一切の債務を連帯保証する」というような定めがありました。このような形態の保証契約、すなわち、具体的にどの債務を保証するのかが定まっていない保証契約のことを根保証契約といいます。
今回の改正では、このような根保証契約のうち、主たる債務(保証の対象となる債務)が貸金債務又は手形割引債務を含んでおり(例えば賃貸借契約の保証人のように主債務が貸金債務でない場合にはこれに該当しません)、かつ、保証人が法人ではなく個人である場合には、以下の①~③の制限がなされることになりました。
① 極度額の定めがない根保証の無効
極度額とは、元本、利息、遅延損害金等を全て含んだ保証責任の最高限度額のことです。
これまでの根保証契約においては、このような保証人の責任の最高限度額の定めがない形態のものもありました(包括的根保証契約)。
しかし、このような包括的根保証契約では保証人の保証責任が無制限に拡大してしまうため、後に、根保証契約の締結時には予想もしていなかったような莫大な金額の保証責任を負わされることもありました。
そこで、今回の民法改正では、極度額の定めのない根保証契約は無効とされることになりました。
② 元本を確定しなければならない期間の制限
根保証契約において、保証の対象となる主債務がそれまでに発生した債務に限られ新たに発生する債務は保証の対象外となることを「元本の確定」といいます。 通常、この元本の確定日は、根保証契約の締結時から何年という形で根保証契約上定められております。
しかし、この元本の確定期間があまりにも長すぎたり、確定日の定めがない場合には、根保証人は、いつになってもその責任から開放さないことになってしまいます。
そこで、今回の改正では、根保証契約における元本の確定期間を、根保証契約締結時から5年以内と制限しました。
もし、これに反して、5年以上の日を取り決めたり、または、元本の確定期間を設けなかった場合には、根保証契約締結時から3年で元本の確定がなされることとなりました。
③ 元本が当然に確定する事由
以下の場合には法律上当然に元本の確定がなされることになりました。
(ア) 根保証契約の債権者が、主たる債務者または根保証人の財産に対し差押さえ をかけるなど強制執行の申立をしたとき。
(イ) 主たる債務者または根保証人が、破産開始決定を受けたとき。
(ウ) 主たる債務者または根保証人が、死亡したとき。
3 改正民法の施行時期
今回の改正民法の施行時期は平成17年4月1日です。
したがって、施行日より前に締結された保証契約には、上記のような改正民 法の適用はありません。
もっとも、上記2②の元本の確定日については、改正民法の施行日前に締結 された根保証契約にも以下のように適用があります。
① 契約で極度額の定めのある場合
・契約で元本の確定日の定めのない場合、改正法施行日から3年で確定する。
・契約で元本の確定日の定めがある場合であっても、その確定日が施行日から5年経過後に設定されている場合には、施行日から5年で確定する。
② 契約で極度額の定めがない場合
・契約で元本の確定日の定めのない場合には、改正法施行日から3年で確定する。
・契約で元本の確定日の定めのある場合であっても、その確定日が施行日から3年経過後に設定されている場合には、施行日から3年で確定する。