相続財産の調査方法
(質問)
父は相当額の財産を残して亡くなったのですが、兄がその財産を一人占めしており、どのような財産を残してくれたのか私たち弟には何も開示してくれない為、相続財産がどれだけあるのか分かりません。
どのように調べたらよいのでしょうか。
(回答)
遺産分割をするには、被相続人にどのような相続財産や負債があったのかを調査し、被相続人に帰属する相続財産や負債の範囲を特定しなければなりません。
法定相続人は、法的には被相続人の「包括承継人」という地位が認められますので、法定相続人であれば、本人と同じ立場で、関係連絡先に相続財産に関する記録の閲覧を請求できます。
相続財産だけでなく、特別受益や遺留分減殺請求に影響する生前贈与の有無も下記の調査方法により同様に調査することが出来ます。
相続財産の調査とその特定は、専門の弁護士等に相談し慎重に調査されることをお勧めいたしますが、以下では法定相続人でも調査可能な方法をご説明します。
1 不動産の調査方法
不動産の固定資産税を取り扱っている市区町村の固定資産税課では「名寄帳」を作成しています。不動産所があると思われる市役所の固定資産税課に相談してみるとよいでしょう。
2 被相続人の負債状況を確認したいと き
全国銀行協会の「信用情報閲覧サービス」を利用すると、負債の状況を調査することができます。
ただし、連帯保証債務など同サービスではその存在を確認できない債務もあります。
3 公正証書遺言の有無
公証役場には遺言書の謄写申請を行うことが出来ます。
公正証書遺言をしたなどと被相続人から聞いている場合又はその可能性がある場合には被相続人の住所地近くの公証役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
4 税務申告書類の調査
税務申告書類から被相続人の財産状況が判明することはよくあることです。
税務署では、過去3年間の納税証明書を発行してもらうことができます。
また、相続税の申告書などの記録は、運転免許証など本人確認書類と相続人であることを証明する戸籍謄本があれば、閲覧することができます。
なお、税務申告書類の記録の保管期間は5~7年となっています。
5 預金の取引履歴の開示
銀行では、預金通帳の記録に相当する取引履歴を開示してもらうことが出来ます。
この取引履歴の開示によって相続財産である預金を相続人の1人が無断で抜き出ししていたことや生前贈与があったことなどが発覚することもあります。
なお、一部の相続人に勝手に引き出されてしまう恐れがある場合は、銀行に対して、①被相続人が死亡して相続が発生していること、②一部の相続人のみから解約の請求があっても応じてもらいたくないことを内容証明通知書で通知しておくとよいでしょう。銀行は、口座名義人が死亡し相続が発生したことを知った場合、原則として、法定相続人全員の印鑑証明書付きの払い渡し請求書でないと応じない扱いをしております。
6 保険会社・証券会社への問い合わせ
被相続人が生命保険をかけていた、証券取引をしていたという場合には、その保険会社・証券会社をご存知であれば、保険会社や証券会社に取引履歴の開示を請求すると良いでしょう。
保険会社や証券会社の連絡先などは、被相続人の住所地へ送付された各種郵便物、本人が生活上使用していた銀行口座の取引履歴・通帳履歴などから分かることがあります。
7 勤務先への問い合わせ
被相続人が勤務していた会社に問い合わせることで、退職金支給明細や給与の源泉徴収票の写し、これららの支払先口座を開示してもらえる場合があります。
8 年金支払先口座の調査
被相続人が年金暮らしをしていた場合には、国民年金課やその他各種年金の取扱機関に問い合わせることで、年金の送金先口座など被相続人が生活資金として使用していた銀行口座がわかることもあります。