不動産広告に関する法的規制
<質問>
当社は、自社ホームページ上で不動産の広告も行っておりますが、不動産広告に関しては、景品表示法に基づき、「公正競争規約」によって様々な規制がなされていると聞いております。
公正競争規約ではどのような規制があるのでしょうか?
<回答>
1 景品表示法の規制
不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第4条第1項は、次の三つの表示を不当表示として禁止しております。
(1) 商品の内容に関する不当表示
「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」
(2) 取引条件に関する不当表示
「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」
(3) 「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの」
(第3号)
2 公正競争規約による規制
前記の景品表示法による不当表示の規制に関しては、景品表示法に基づき、公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保するために、事業者団体間において自主的に締結される「公正競争規約」(表示規約)が設けられております。
この表示規約において不動産広告に関する詳細な規制内容が定められております。
この表示規約に関しては、「不動産公正取引協議連合会」(03-3261-3811)が規約の制定・改定や規約の全国統一的な解釈を示す役割を担っており、表示規約・景品規約違反に対する調査・是正措置・違約金の賦課徴収に関しては、各地域の不動産公正取引協議会(首都圏については「社団法人首都圏不動産公正取引協議会」(03-3261-3811、http://www.sfkoutori.or.jp/)がその役割を担っています。
不動産公正取引協議会の加盟事業者が表示規約・景品規約に違反する場合、原則として景品表示法にも違反することとなりますが、業界の自主的努力を尊重ないし活用するという表示規約の制度趣旨が考慮され、特に悪質な違反行為を除き、原則として、直ちに景品表示法上の排除命令等の措置が講じられることはなく、一義的には公正競争規約・景品規約による改善・是正措置・違約金の賦課徴収に委ねられることになっています。
表示規約は、規約の加盟事業者に対してのみ規約の効力が及ぶことになっておりますが、宅建業者の場合、それぞれが所属する宅建業協会が規約に参加している場合、当該宅建業協会に加盟している宅建業者であれば規約の効力が及ぶ加盟事業者となるため、事実上、ほとんどの宅建業者に規約の効力が及ぶことになります。なお、宅建業協会などの業界団体に加盟していない不動産業者については、景品表示法が直接適用されますが、この解釈・運用に際しては表示規約が斟酌されますので、これらの業者に対しても、事実上、表示規約の適用があると言うことができます。
3 表示規約違反の具体例
以下では、よくある表示規約違反のケースを3つほど紹介します。ただし、表示規約での規制内容はこれに限られませんので、詳しくは、上記の不動産公正取引協議連合会が発行している「不動産広告ハンドブック」などを参考にして頂きたいと思います。
<ケース1>
Q 当社は、宅地建物取引業と建設業を営んでいます。この度、土地(更地:価格4,000万円)の売却の媒介の依頼を受けました。できれば、購入者から住宅の建築の注文も受けたいと考えていますので、当社の標準仕様で建築した場合を前提として、次のような新築住宅の広告をしたいと思っています。表示規約上何か問題はあるでしょうか。なお、建物の建築確認は受けていません。
新築6,000万円(税込)
●交通/○○線○○駅歩10分
●敷地/○○㎡(正味)
●建物/110㎡・4LDK
●所在/○○市○○○丁目
A 規約違反になる。
この広告は、建物の建築工事完了前の建物(土地付き)について、当該建物の建築に際し必要とされる建築確認を受ける前に、その売買に関して広告表示をしたものと認められます。したがって、表示規約第5条(広告表示の開始時期の制限)に違反するものです。純粋な土地だけに関する表示事項(「売地○○円」など)を明示した上で、建設予定の建物価格の目安(「1㎡あたり○○円で建築請け負います」など)を示すことは可能です。
<ケース2>
Q ①建売住宅を、平成20年6月1日に、6000万円で売り出しましたが、買い手がつかず平成20年8月1日に5,500万円に値下げしました。
この場合、広告に際し、次のように表示してもよいでしょうか。
「価格6,000万円(旧価格公表時期/平成20年6月1日)→5,500万円(平成20年8月1日値下げ)」
②建売住宅を、平成20年6月1日に、6000万円で売り出しましたが、買い手がつかず平成21年1月1日に5,500万円に値下げしました。
この場合、広告に際し、次のように表示してもよいでしょうか。
「価格6,000万円(旧価格公表時期/平成20年6月1日)→5,500万円(平成21年1月1日値下げ)」
A ①規約違反になる
二重価格表示は規約第20条により原則禁止されていますが、規則第14条の要件を満たす場合に限り許されています。
規則第14条は、値下げの場合に二重価格をしてもよい「旧価格」について「値下げの3ヶ月以上前に公表された価格であって、かつ、値下げ前3ヶ月以上にわたり実際に販売していた価格」(規則第14条本文)であることを要件としています。
A ②規約違反になる
規則第14条は「(2)値下げの時期から6ヶ月以内に表示するものであること」を要件としています。
<ケース3>
Q 取引しようとする土地に法的規制(例えば、市街化調整区域に該当する)がかかっている場合には、どのように記載しなければならないのでしょうか?
A 取引物件に関する不利益条件に関しては、表示規約第13条において「見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明りょうに表示」するよう義務付けられております。
市街化調整区域に所在する土地については、都市計画法第29条、第43条によって開発行為や建物の建築が原則として禁止されておりますので、このような土地については「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません。」と16ポイント(5.6mm四方の大きさ)以上の文字で明示しなければなりません。「市街化調整区域」との表示だけでは、宅地建物取引の知識がない消費者が具体的にどのような不利益を受けるのかが明示したことにはならないため、「宅地の造成及び建物の建築はできません。」まで明示する必要があります。
4 そして、表示規約違反の広告について、不動産業者が不動産公正取引協議会の是正勧告を無視し是正しないでいると、最高で500万円の違約金が課される可能性がありますので、注意が必要です。
具体的には、以下の順に不利益処分を受けることになります。
事業者が規約違反のための不動産公正取引協議会の調査に協力しない場合にはおいて、警告を発しても調査に協力しない場合→50万円以下の違約金
表示規約第5条、第8条~第23条に規定に違反した場合→違反行為を排除するために必要な措置(EX:看板・チラシの撤去・回収、訂正広告など)、再び行ってはならないことの警告又は50万円以下の違約金
事業者が不動産公正取引協議会による上記②排除措置を履行しない場合(看板の撤去等に応じない、再度表示規約違反に該当する表示行為をした場合)→500万円以下の違約金
また、不動産公正取引協議会による上記のような是正措置を無視して、違法な広告を続けていると、今度は、公正取引委員会による「排除命令」などの摘発の対象にもなります。